交友関係・人とのつながり
中井久夫先生(現神戸大学名誉教授)
同じ病院に勤め、若き日の先生の臨床場面(診察を含めて)をこの目で見ただけでなく、私の車で青木病院や東大分院に通うことが続いた。先生が名古屋に転勤するまでの4、5年間のことである。車中で先生はいつも精神医療や治療、患者さんのこと、薬の使い方、アプローチの仕方について語った。個人授業を受けていたに等しく、そのとき聞いた事柄で著作集に載っている部分は今も鮮明に想起できる。 『日本の医者』(日本評論社)にあるとおりの先生である。
ある冬の寒い夜に運転手として往診に同伴したことがある。2、3時間の面接に相席したが、患者が描いた絵を系時的に並べ、その時々の心理状態を話し合い、今そのときの患者の状態を説明した。患者の世界への怒りは鎮まり、緊張がほぐれて場の雰囲気が一変して和らいだ、私はその起承転結ぶりに驚嘆した。患者は以降安定して活躍したと聞く。わかりやすく言語化できないのがもどかしい。他にもエピソードはつきることがない。私にシャーロック・ホームズのワトソン君のような才能があったら何冊でも伝記がかけるのだが…..。
先生の「知」、「理」は言うまでもないが、私は先生の病む人や弱者への惻隠の「情」に強く魅力を感じていた。お高い教授職にあっても全国のコメディカル・患者・家族に好感をもたれ続けている所以であろう。
故・遠藤四郎先生
慈恵医大の先輩。米国に留学しエアードに学んだ。てんかん患者さんの臨床発作を聞いて脳波上の局在部位と所見を言い当てるほどの脳波のエキスパート。先生から脳波所見の判読を教わり、自分で読んだ脳波所見300例を直接添削していただいた。惜しむらくは働き盛りに早逝されたことだ。
先生が健在だったら, 日進月歩の現在の技術を駆使して研究や臨床に多大な業績を残されたに違いない。
故・安永浩先生
東大分院神経科科長。ファントム空間論は有名。分け隔てなく他大学からの入局希望者を受け入れた。温厚な先生だったが、在職中に一度だけ、当直に遅れたりして医師としての責任感と倫理観が薄い医局員を厳しく叱責し, 研修医に自覚を促し驚かせたことがある。私が勤めていた青木病院にしばしば入院依頼をしてこられた。
紹介状は簡潔明瞭にして、紹介目的がわかりやすく記載されていたことが印象的であった。
ファントム空間論は、私の頭はついていけなかったが、先生は気むずかしい精神病理学者ではなかった。患者さんを大切にする臨床医であり、多くの人材を育てた。
河合 邦生先生(調布駅前の河合クリニック)
青木病院を紹介してくれた慈恵医大の先輩である。
この出会いがなかったら私の精神科医人生はどうなっていたか、想像できない。
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